JSDC_medal

日本構造デザイン賞賞牌

2025年 第20回日本構造デザイン賞


──
総合選評
──
 本賞は今年で20回目を迎えると同時に昨年に続き多くの応募をいただきました。まずは構造デザイン賞の意義を受け止め期待を込めて応募いただいた応募者の方々に御礼を述べたいと思います。
 時代にふさわしく多種多様な作品が応募されました。超高層、アリーナ、研究所、木造住宅、橋、RCシェル、木造ラーメン、膜構造、免震、フラットスラブ……、いずれも構造技術を駆使しつつ、建築空間と一体となる統合的なクオリティが高いものばかりでした。また海外からの応募もあり、今後構造デザイン賞がより広く認知され、世界に向けて発信できる一歩となる可能性も感じました。
 今年度の受賞は後藤一真氏「うめきた公園 大屋根施設」、永井佑季氏「あなぶきアリーナ香川(香川県立アリーナ)」の2作品となりました。どちらも鉄骨シェルの連続した大空間です。また設計者がSANAAであることも共通しています。それぞれの技術的な特徴とその優れた建築的特性については受賞作品の説明と審査講評をご覧いただければと思いますが、審査の過程で内容と質において2作品は抜きん出た存在として評価されました。その上で同じ建築家の同種の建築タイプの作品を選定することへの逡巡もありました。議論の過程では、それぞれのまったく異なる建築条件に対して、建築空間と構造の親和性・一体性をどう高めるか、複雑な解析的ソリューションをどうまとめていったか、物理的に困難な事象に対してどのような技術的創意工夫を行ったか、コストエンジニアリングに踏み込んで建築プロジェクトをマネイジングしていったか、など構造設計者がどう考え、さまざまなアイデアをしぼり、困難な事項に対して同僚や関係者と協力していかにそのプロセスを乗り越えていったか、それらをひとつひとつ理解していきました。最終的にはこの2作品はそれぞれで卓越した独自の構造デザインの価値を有すると全員で判断できました。
 振り返ってみると本賞の始まりとなる「松井源吾賞」においては1991年第1回の「サン・ジョルディパレス」をはじめとして数々の大空間建築とその設計者が受賞されています。2006年に構造デザイン賞となってからも大空間作品の受賞はあるものの近年はやや少ないように思えます。今回の受賞作品をきっかけとして、ぜひ構造デザインの華である大空間建築を、世界に発信できる新たな技術と空間性をもって創出できるとよいと思います。
 また今回惜しくも受賞には至らなかった海外からの応募作品はRCシェルを用いた人道橋という日本ではまったく考えられない作品でした。構造デザインはもちろん日本の中で完結するものではありません。ぜひ今後海外からも積極的に応募を募り、常識を超えた新しい価値観の構造デザインにもこの賞を広げられると良いと思います。

岡村 仁(選考委員長・構造家)


──
2025年 第20回日本構造デザイン賞
──

後藤 一真(ごとう・かずま)/うめきた公園 大屋根施設
永井 佑季(ながい・ゆき)/あなぶきアリーナ香川(香川県立アリーナ)


──
2025年 第20回日本構造デザイン賞 松井源吾特別賞
──

磯野 義人(いその・よしと)
膜構造による空間構造の発展への寄与


──
選考委員
──
岡村 仁(委員長・構造家)
安原 幹(建築家)原田 麻魚(建築家)早部 安弘(構造家)腰原 幹雄(構造家)鈴木 啓(構造家)大野 博史(構造家)