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後藤 一真
(ごとう・かずま)
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経歴(受賞時)
1983年 埼玉県生まれ
2006年 慶應義塾大学 理工学部システムデザイン工学科 卒業
2008年 慶應義塾大学大学院 理工学研究科開放環境科学専攻 前期博士課程修了
2008–14年 Arup(東京)入社
2014–17年 Arup(ロンドン)勤務
2017年–現在 Arup(東京)勤務
慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科 非常勤講師 (2019年–現在)
慶應義塾大学大学院政策メディア研究科 非常勤講師 (2018-23年)
主な担当作品
「自然体感展望台 六甲枝垂れ」(2010年)
設計:三分一博志建築設計事務所
「2015年ミラノ国際博覧会日本館 木質格子」(2014年)
設計:石本建築事務所
「洗足学園The Lawn音楽堂」(2019年)
設計:k/o design studio
「大宰府天満宮仮殿」(2023年)
設計:藤本壮介建築設計事務所
「Prada Mode Tokyoの仮設パビリオン」(2023年)
設計:西沢立衛建築設計事務所
「清春芸術村White Loop」(2024年)
設計:VUILD
「うめきた公園 大屋根施設」外観。(©SANAA) ▶
うめきた公園 大屋根施設
所在地:大阪府大阪市北区大深町5/主要用途:集会場、展示場、飲食店/竣工:2024年/発注者:三菱地所、大阪ガス都市開発、オリックス不動産、関電不動産開発、積水ハウス、竹中工務店、阪急電鉄、うめきた開発特定目的会社/設計:妹島和世+西沢立衛/SANAA/施工:うめきた2期共同企業体(大林組・竹中工務店)/敷地面積:24,990.9㎡/建築面積:2,900.36㎡/延床面積:2,777.74㎡/階数:地上2階/構造:S造/工期:2022年8月〜2024年7月
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選考評
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このところ「公共的架構」という言葉について考えている。多くの人が集まる公共空間をつくり出す特別な架構のことであり、そうした架構は洋の東西を問わず建築史を彩ってきた。今年度の構造デザイン賞に選ばれた2作品はともに、その系譜に連なる公共的架構だといえる。香川のアリーナが、海際に大らかな風景をつくり出しているのに対し、うめきた公園の大屋根は、さまざまな力学が複雑に絡み合う再開発エリアの中に、架構によって人間の居場所を確保している。床面積約3,000㎡と聞くと、この場所にあっては意外なほど小さいが、存在はとても大きい。大きいけれど人間的である。低く抑えた屋根の高さはなめらかに変化し、私たちの身体との距離感もまた変化する。群衆のための空間から、独りのための空間までが連続的につくり出されている。その実現を支えているのは、構造家による卓越したジオメトリ設定とディテール、そしてスケールに対するセンシティビティである。巨大な力が集中しているはずのアーチの柱脚付近に人びとが和やかに憩っている風景は、この架構が確かな身体性を宿していることを示している。構造デザイン賞に相応しい見事な架構である。
安原 幹(選考委員・建築家)
ゆるやかな3連の曲面が美しい建築である。それは外観の形状だけでなく、内側から見ることのできる構造体の構成も美しいと感じる。建築家との協業のプロセスの中で、数回のデザイン変更を重ねるにつれて、構造システムが洗練されてきたと思った。最終形としての構造システムはフラットバーによる三角グリッドのシェル構造である。特に秀逸である点は、長手方向に配置するFB材を同一面内となる同一形状とした点である。イベントスペースに入り、内側から見上げると、均質な架構の中で、この長手材のラインが建築全体に伸びやかな印象を与えている。後藤氏はジオメトリック・エンジニアリングを得意としており、本作品は氏の才能がいかんなく発揮されている。複雑化する建築形態に対して、ジオメトリック・エンジニアリングは今後ますます重要となってくるであろう。ボルト接合を排し、徹底的に溶接にこだわった点も、この建築の完成度に大きく貢献している。極めて高いレベルの建築とエンジニアリングの融合が、上質な空間の創出に貢献した点を高く評価し、日本構造デザイン賞とした。
早部 安弘(選考委員・構造家)
30度を超す日差しが厳しい盛夏の日、屋外イベントスペース越しに緑地公園が広がるのが見え、公園で子ども連れの家族が賑やかに遊ぶ一方で、子連れの家族やカップル、単身者らが46mスパンのイベントスペースの屋根下で、心地良い風を感じながら佇んでいた。3つの自由曲面屋根が連なる長さ120mの「うめきた公園 大屋根施設」は、長辺方向の梁は曲線に切り出したPL36~60×270、短辺の直交梁は面内座屈補剛を兼ねたBT250×250(125)×32×22らで構成されるグリッドシェルとなっている。地上レベルからの見え方を重視して、決定されたという通り、リブの美しい架構である。イベントスペース南側は、地面にしっかりと固定され、反対側は東西の2点で支持され、浮遊感を維持しながら、情報発信棟・レストラン棟へと連続していく。この軽やかな大屋根建築を実現するために、幾何学を整理しながら屋根の緻密な解析を行い、さらに視認性の高い脚部ディテールの美観を保った合理的な設計、施工性の高い合理的な基礎の設計等がされ、細部に至るまで構造デザインと融合した建築であると感じた。
鈴木 啓(選考委員・構造家)