2020年第15回
日本構造デザイン賞
松井源吾特別賞

総合選考評

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加藤 史郎
(かとう・しろう)

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加藤 史郎

経歴(受賞時)
1945年 京都府京都市生まれ
1967年名古屋大学建築学科卒業
1972年 名古屋大学大学院博士課程修了
1978年豊橋技術科学大学助教授
1986年 豊橋技術科学大学教授
2016年 IASS(シェルと空間構造に関する国際会議)名誉会員

受賞
1986年 日本建築学会賞(論文 回転殻の動的並びに座屈性状に関する解析的研究)
1997年 膜構造研究特別論文賞(織構造格子モデルの適用による膜構造解析に関する一連の研究)
2002年 Pioneers' Award, the Space Structures Research Centre of the University of Surrey
2002年 IASS (シェルと空間構造に関する国際会議)Tsuboi Prize; jointly awarded with M. Uchikoshi et al. (How do we realize a super large dome under severest earthquake? A dome with seismic isolation system)
2006年 IASS (シェルと空間構造に関する国際会議)Tsuboi Prize; Jointly awarded with Y. Ookouchi et al. (Experimental studies of tower structures with hysteretic dampers)

指針類の作成
2009年 日本建築学会「鋼構造座屈設計指針」(2009年版)を分担(多田元英ほか)
2014年 IASS WG 8 "Draft Guide to Buckling load Evaluation of Metal Reticulated Roof Structures"をChairとして主担当 (T. Takeuchi et al.)
2016年 日本建築学会「ラチスシェル屋根構造設計指針」の分担執筆(竹内徹ほか)
2019年 IASS WG 8 "Draft Guide to Earthquake Response Evaluation of Metal Roof Spatial Structures"をCo-Chairとして分担 (Chair; T.Takeuchi)(T. Takeuchi, SD Xue et al.)

著書
2001年 日本建築学会『空間構造の耐震設計と設計例』を分担執筆(川口衞ほか)
2006年 日本建築学会『空間構造の動的挙動と耐震設計』を分担執筆(坂壽二ほか)
2010年 日本建築学会『ラチスシェルの座屈と耐力』を分担執筆(小河利行ほか)
2011年 IASS 『Fifty Years of Progress for Shell and Spatial Structures』を分担執筆(I. Mungan et al.)

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業績:シェル及び空間構造の発展への貢献
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"Guide to Buckling Load Evaluation of Metal Reticulated Roof Structures," 2014

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選考評
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 第15回の日本構造デザイン賞 松井源吾特別賞は、理事会の推挙によって豊橋技術科学大学名誉教授の加藤史郎博士に授与されることになりました。
 当倶楽部の構造デザイン賞松井源吾特別賞は、松井源吾博士の構造設計者を顕彰したいという遺志を継承するかたちで、松井政枝夫人のご了解を得て設置したもので、構造設計に限定せず、構造設計に関連した業績を、広く学際的な分野、生産的な分野からも選出して推薦し、受賞者を決定することにしています。
 今回授賞が決まった加藤史郎博士は、名古屋大学・松岡理教授に師事し、空間構造の研究で名古屋大学から工学博士を授与されています。教育、研究の分野では、名古屋大学建築学科助手を皮切りに、豊橋技術科学大学教授、副学長の要職を務められました。海外でも、国際シェル空間構造学会(IASS)に対する貢献により名誉会員に推挙されています。
 研究分野の主テーマは空間構造で、「シェル構造の動的安定問題」、「スペースフレームの座屈」、「クーリングタワーの地震時応答特性」等に関し多くの業績を残されました。また、テント膜の構成方程式を論理的に誘導するなど、薄膜構造に関しても成果を収めておられます。
 これ等の諸研究は国内外で高く評価され、日本建築学会賞、日本膜構造協会研究論文特別賞、イギリス・サリー大学・空間構造研究所 The Pioneers’ Award、2度の国際シェル空間構造学会(IASS)坪井賞を受賞されています。
 また、これらの研究成果は、国内においては日本建築学会「ラチスシェル屋根構造設計指針」、「コンクリートシェルの構造設計ガイドブック」に結実し、IASSにおいても、加藤史郎博士が主担当となり、「Draft Guide to Buckling Load Evaluation of Metal Reticulated Roof Structures」として纏められています。
 研究成果の多くは、設計指針・規準等に導入され、鉄骨造及びRC造の空間構造の構造設計法の発展に寄与し、空間構造の設計をするにあたっての貴重な資料として資される結果となっています。
 また、大学院在籍時から当時黎明期であった有限要素法に着目し、シェルの数値解析についても研究され、数値解析の普及に尽力されました。構造設計者として直接関わっておられないものの、コンクリートシェル、ラチス屋根、縦型高層ラチス構造等に関する設計についても、解析技術を提供して構造設計に協力してこられました。
 このように、加藤博士の研究や活動は、教育や学究的な領域にとどまることなく、設計者のサポーターとして、広く構造設計者を支援され、多くの高度な設計活動の実現に協力されてきました。
 以上のことから、加藤史郎博士に松井源吾特別賞を授与して、その業績を称えたいと思います。

中田 捷夫(選考委員長・構造家)

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