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日本構造デザイン賞賞牌

2018年 第13回日本構造デザイン賞


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総合選考評
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 日本構造デザイン賞が、前身である松井源吾賞から数えると28回目、「日本構造デザイン賞」となってから13回目を迎える。 その13年の間、日本構造家倶楽部会員の個人的な活動によって授賞が維持継続され、今年度の応募者数は前回及び前々回の10名を超える14名となった。 このことは応募者各位の熱意と、これまで当倶楽部を支えてこられた先人たちの努力の結果であり、関係者に深く感謝したい。 一方、倶楽部創立以来、中心メンバーのひとりとしてご尽力いただいていた播繁さんが、昨年9月に亡くなられたことは、惜別の想いと共に痛恨の極みとして心に残る。
 今回の応募者を年齢別に見ると、40才代が6名、30才代と50才代が各4名で、働き盛りの3世代に渡って、概ね平均した人数分布であった。 また応募者の所属先を見ると、小規模構造設計事務所が8名、大規模総合事務所が5名、大学人が1名であり、小規模事務所の健闘ぶりがうかがえる。
応募作品の構造種別・構造方式は多種多様で、混構造も少なくない。さらに、いかに小さな断面、ないしは少ない数の部材で十分な安全性を確保するかに力を注いだ作品が多く、近年の建築構造に対する関心と要求のいっそうの高まりを感じる。
 審査は6人の選考委員で行った。まず応募者より提出された応募作品と実績に関する資料に加えて、当該作品が出版物で発表されている場合はその記事も併せて閲覧し、各応募者に関する意見交換を行った。その後、第2段階の審査対象者を絞り込むため、全応募者14名を対象に、各選考委員が3票を持ち、2名以上に投票する方式で投票を行った。投票結果は2者が3票(50%)獲得したものの、圧倒的多数の票を集めた応募者はいなかった。そこで得票数が0票だった5者を除く9者に関して論議を重ね、絞り込んだ5者を候補とする2回目の投票を行った。その結果、各委員の持ち票2票のうち、2者が5票(83%)と3票(50%)を得票し、他の応募者の得票数は0〜1票であった。これより上位得票者である谷川充丈氏と山脇克彦氏を授賞者に選定した。
 上記2名の受賞者の他に、2回目の投票まで残った応募者は、佐藤孝浩氏、風間宏樹氏、長谷川大輔氏の3人であった。佐藤氏の応募作品は、市街地に建つ6階建ての事務所で、1〜3階をRC造、4〜6階を木造としながら2階以上の階を免震構造として、都市型木造建築の可能性を拡げている。風間氏は短辺が6mの細長い建築の短辺方向両端に、圧縮力にも抵抗できるようにプレストレスを導入したテンションロッドを配置して、内部の有効面積を最大限に広げることに成功している。長谷川氏はスパン22mの小型航空機の格納庫を、一般流通木材を用いたトラス構造で実現した。
 3者とも30代後半から40代前半の若手でありながら、豊富な業績を有しているが、応募作品において受賞者にわずかに及ばなかった。しかしその応募内容は、今後の活躍を大いに期待できる力作揃いであった。
 松井源吾特別賞は、独シュトゥットガルト大学の教授であると共に、多くの優れた設計実績を持つ構造設計者であるヴェルナー・ゾーベック氏を選考委員全員一致で選出した。

金田 勝徳(選考委員長・構造家)

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2018年 第13回日本構造デザイン賞
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谷川 充丈(たにがわ・みつたけ)/NICCAイノベーションセンター  経歴と受賞作品・選考評 
山脇 克彦(やまわき・かつひこ)/籤 -HIGO-  経歴と受賞作品・選考評 

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2018年 第13回日本構造デザイン賞 松井源吾特別賞
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ヴェルナー・ゾーベック(Werner Sobek)
軽量構造、高層建築、透明なファサードシステムの展開に対する顕著な貢献
 経歴と業績・選考評 

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選考委員
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金田 勝徳(委員長・構造家)
高橋 晶子(建築家)竹内 徹(構造家)桝田 洋子(構造家)多田 脩二(構造家)山田 憲明(構造家)