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日本構造デザイン賞賞牌

2015年 第10回日本構造デザイン賞


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総合選考評
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 「日本構造デザイン賞」は今年で10回目を迎える。今年も昨年と同じ11件の作品の応募、松井源吾特別賞は1件の推薦があった。6月15日に栗生明、工藤和美、大森晃彦、金田充弘、小西泰孝、山田憲明、新谷眞人による選考会を行った。議論と投票を交えて選考した結果、桝田洋子さん「行橋の住宅」(JUUL House)と、柴田育秀さん「Ribbon Chapel」に「日本構造デザイン賞」を授賞することにした。
 「行橋の住宅」は1階上部に1層分の成をもついくつかの半円筒シェルをかけ渡して、JUUL形状となる建物の横断面が1階の吹き抜けと2階の居室を構成する。構造が一体となって独創的な空間を構成することに成功している。 受賞者はトロハの水道橋に学んだとのことである。「Ribbon Chapel」は2重らせんをモチーフとした建築コンセプトに対し、らせんを数か所結合すれば構造の安定が得られることを発見して、例を見ない構造を実現している。おふたりは構造デザインにおいてきわめて独創的であり、「松井源吾賞」を継承する「日本構造デザイン賞」を受賞されるに相応しいと考える。
 次に、授賞には至らなかったいくつかの作品について触れてみたい。
 原田公明さんによる「港区立小中一貫教育校 白金の丘学園」は都市型の学校である。数多い教室群や教員室など諸室を階層化された建物の中に取り込み、校庭は屋内体育館の屋根に載せるなど狭い敷地に効率よく計画されている。体育館屋根のPCによるレンズ形状のフィーレンディールトラスは下弦面もPCで構成し、これに圧縮力を加えてトラス全体の剛性を高めている。
 名和研二さんによる「丸太組:『床』の構築、丸太組:『集い』の構築」はふたつの異なった構造作品の応募である。特に「五浦の家」は2本の丸太を松葉型に組んで、矩形平面に並べて大きな組柱を配置しその上に建物が載っている。原初あるいは古代を思わせる骨太の構造であり、氏の構造に対する理念を感じさせる作品である。
 本年はふたりの女性構造設計者の応募があった。今後の構造設計界における女性の活躍を期待させる。栗原真理子さんの「周辺環境と呼応するRCと木で構成された体育館」はシンプルなわかりやすい構造形式である。コの字に配置されたRC耐力壁の一辺に接する木造の屋根はまさに浮遊している。
 坪井宏嗣さんによる「金光教諫早教会」の軸面に配された耐震要素は工芸品のような面格子が市松状に配置され、印象的なファサードを形成している。いくつかのスタディを経て決定された経過などを含め、松井源吾先生の早稲田大学理工学部1号館の壁面のブレース構造を想起させる。
 「日本構造デザイン賞 松井源吾特別賞」は日本における膜構造の先駆者である石井一夫横浜国立大学名誉教授に委員会全会一致で決定した。

新谷眞人(選考委員長・構造家)

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2015年 第10回日本構造デザイン賞
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柴田 育秀(しばた・いくひで)/Ribbon Chapel  経歴と受賞作品・選考評 
桝田 洋子(ますだ・ようこ)/行橋の住宅(JUUL House)  経歴と受賞作品・選考評 

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2015年 第10回日本構造デザイン賞 松井源吾特別賞
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石井 一夫(いしい・かずお) /膜構造デザインの材料・設計法に関する永年の業績   経歴と業績・選考評  

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選考委員
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栗生 明(建築家)工藤 和美(建築家)大森 晃彦(建築評論家)新谷 眞人(選考委員長・構造家)金田 充弘(構造家)小西 泰孝(構造家)山田 憲明(構造家)