2011年第6回
日本構造デザイン賞
松井源吾特別賞

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和田 章 (わだ・あきら)
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経歴(受賞時)
1946年 岡山県生まれ
1968年 東京工業大学建築学科卒業
1979年 同大学・大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了
1970年 日建設計入社
1981年 東京工業大学 工学博士
1982年- 同大学助教授
1989年- 同大学教授
2011年- 同大学名誉教授、 JSCA国際委員会、JSSI理事、技術委員会委員長
2011年 日本建築学会会長

構造設計と研究
1070年- 骨組の力学と解法
1987年 東京工業大学(大岡山)百年記念館
1987年- 新日本製鐵と座屈拘束筋違、損傷制御設計に関する共同研究
1990年 熊本北警察署(構造設計協力)

2003年 東京工業大学(すずかけ台)超高層免震研究棟(ツインタワー)
2009年 同大学(すずかけ台)3棟のロッキング耐震壁を用いた耐震改修

著書
『建築物の損傷制御設計』丸善、1998年(共著)
『免震構造設計指針』日本建築学会、2002年(分担)
『Earthquake Engineering from Engineering Seismology to Performance-based Engineering』CRC Press、2004年(共著)
『建築の構造設計ーそのあるべき姿』日本建築学会、2010年(監修)
『建築画報344「挑戦する構造」』建築画報社、2011(共著)

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業績:耐震工学の理論・研究から構造デザインの発展への貢献
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東京工業大学百年記念館(構造設計協力、1987)。   ▶

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選考評
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今年度の日本構造デザイン賞・松井源吾特別賞については、長年の耐震工学の理論・研究を通じて地震国日本の建築の構造設計の発展に大きな貢献を果たしてきた業績を湛えるべく、日本構造家倶楽部からの強い推薦により、審査委員全員一致で和田章氏の受賞が決定した。同氏は1970年に東京工業大学大学院を終了後日建設計に入社し構造設計の実務に携わった後、1982年に東京工業大学の工学部建築学科助教授に就任、約30年の長きにわたり母校の教授として教鞭を執る傍ら、時代の最先端を行く建築構造技術、耐震工学の研究を行い、我が国の耐震設計を主導する立場から、その実用化と普及を積極的に推進してきた。
その業績は以下に列挙する氏の主たる受賞歴が示すとおりである。即ち、「建築構造物の非線形挙動の解明とその応用に関する一連の研究」(日本建築学会賞・論文賞、1995年)、「建築物の損傷制御構造の研究・開発・実現」(日本建築学会賞・技術賞、共同受賞、2003年)、「アンボンドブレースの発明と高性能鋼のよる革新的耐震技術の開発」(市村産業賞・貢献賞、共同受賞、2005年)、「リダンダンシーに優れた鋼構造建築物のための崩壊制御設計ガイドライン」(日本鋼構造協会業績表彰・特別賞、共同受賞、2006年)、「超高層免震建物用大型免震支承部材の実大部材の実大性能試験の実施」(日本免震構造協会賞・技術賞(特別賞)、共同受賞、2010年)等々である。
また、日本建築センターの超高層建築審査委員会をはじめ多くの委員会活動を通して、より実務的な見地から耐震設計の指導に当たるなど、地震国日本の建築構造設計、構造デザインの在り方に貴重な提言を行い、その発展に絶大なる貢献を果たしてきた。さらに先の東日本大震災以降においては、新技術による建築やインフラのハード面の強化とともに災害を乗り越えるソフトの開発や活用の重要性を強く訴え、より公的、社会的立場から建築の耐震から都市の耐震へとその提言を拡げるなど、日本建築学会の新会長として日本の建築界を代表するオピニオンリーダーの役割も担いつつある。以上、これらの業績と貢献は「松井源吾賞特別賞」の主旨に合致して余りあるものと判断される。
最後に個人的な話で恐縮であるが、氏と私はまったくの同年生まれであり、何かと対照的でありながら何処か同じ道を歩いてきた同志のような親しみを常日頃感じてきたところである。たまたま今回の選考に立ち会うことができたことは望外の喜びでもある。

佐々木 睦朗(選考委員長・構造家)

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