JSDC_medal

日本構造デザイン賞賞牌

2011年 第6回日本構造デザイン賞


──
総合選考評
──
 「松井源吾賞」を継承し、2006年に開始した「日本構造デザイン賞」も本年で6回目を迎える。本年も昨年に引続き、建築家の難波和彦氏、横河健氏、 ジャーナリストの中谷正人氏、そして、日本構造家倶楽部から我々2名が審査に当たった。
 本年は、作品賞候補の応募が7件と少なく、建物規模(延床面積)も一件を除き約150〜2,500㎡と比較的小規模な作品であったが、応募作品の質は全般的に高かった。 作品賞の選出件数の決定も含め、厳正な審査を行った結果、作品賞の候補を2件に絞り込み、完成した建築作品を現地で直接審査することにより、最終結論を出すこととした。 現地審査では応募者との質疑応答を徹底して行い、その後、審査委員全員でさらに討議を重ねた結果、以下の2作品を「日本構造デザイン賞 作品賞」に選定することとした。
 大野博史氏による「Ring Around a Tree(ふじようちえん増築)」は、建築家の手塚貴晴・由比氏の求める一本の記念樹を囲う自由な平面形状、 僅か150㎡、2階建ての建築を、子供のスケールに合わせた小さい構造体の集積で表現し、水平力に対しては鋼板や無垢の鉄骨部材によるフィーレンディール架構により抵抗させている。 また、記念樹の根を痛めないよう基礎構造にも細心の配慮がなされるなど、デザインコンセプトと見事に融合した構造デザインであると評価する。
 鈴木啓氏による「えんぱーく(塩尻市市民交流センター)」は、建築家の柳澤潤氏の提案する塩尻市の新しいシンボルとしての“「街」のような密度と「森」のような風景”が、 約100本の薄い板状の構造体(壁柱)で表現されている。この壁柱はプレキャストによる厚さ6㎜の鋼板付きの鉄筋コンクリート造(厚さ200㎜)であり、 高さ11.4m、幅が4種類の壁柱を平面的に一見ランダムではあるがバランス良く配置し、また、建物全体を免震構造とすることにより、デザインコンセプトを巧みに具現化している。
 また、本年の「日本構造デザイン賞 松井源吾特別賞」に関しては、日本構造家倶楽部からの強い推薦により、和田章氏の受賞が決定した。 同氏は東京工業大学にて教鞭を執る傍ら、建築構造物の非線形挙動の解明、免震構造、制震構造、そして、損傷制御設計の提唱など、時代の最先端を行く建築技術、 耐震工学の研究を行い、その実用化と普及を主導してきた。また、日本建築センターの超高層建築審査委員会などを通し、より実務的な見地から構造設計者の指導に当たるなど、 地震国日本の建築の構造設計、構造デザインの在り方に常に提言を行い、その発展に絶大な貢献を果たしてきた。「松井源吾特別賞」の主旨に合致して余りあるものと判断する。
 本年は、日本構造デザイン賞への応募が少なかったことが非常に残念である。本賞の選考に当たっては、デザインコンセプトに対する構造デザインの優れた試みと、 両者の整合性・バランスという観点から、最も優秀な建築を作品賞として選出している。我こそはと思う方は是非積極的に本賞に応募していただきたい。 来年以降の本賞へのさらなるチャレンジに期待する。

佐々木睦朗(選考委員長・構造家)中井正義(選考委員・構造家)

──
2011年 第6回日本構造デザイン賞
──

大野 博史(おおの・ひろふみ) /Ring Around a Tree (ふじようちえん増築)  経歴と受賞作品・選考評 
鈴木 啓(すずき・あきら)/えんぱーく(塩尻市市民交流センター)  経歴と受賞作品・選考評 

──
2011年 第6回日本構造デザイン賞 松井源吾特別賞
──

和田 章(わだ・あきら) /耐震工学の理論・研究から構造デザインの発展への貢献   経歴と業績・選考評  

──
選考委員
──
難波 和彦(建築家)横河 健(建築家)中谷 正人(建築ジャーナリスト)佐々木 睦朗(選考委員長・構造家)
中井 正義(構造家)