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アラン・バーデン
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経歴(受賞時)
工学博士・構造設計一級建築士
Chartered Civil Engineera(UK)
1960年 イギリス生まれ
1991年 British Airpors Authority
1986年 ロンドン大学インペリアル・カレッジ土木工学修士課程卒業
1986年 Dewhurst Macfarlane & Partners
1987年 AA School London Techinical Tutor
1988年 Ove Arup & Partners
1991年 東京大学土木工学科博士課程卒業
1991年 木村俊彦構造設計事務所
1992年 SDG
1997年 関東学院大学教授
1997年 ストラクチャード・エンヴァイロンメント設立
2009年 芝浦工業大学・非常勤講師
主な作品
2000年 オレンジフラット、宮城県
2001年 Ulsan Baseball Standium、韓国
2004年 Towered Flats. 東京
2005年 前橋工科大学クラブ棟、東京
2007年 高雄市地下鉄R9駅入口上屋、台湾
2007年 STYIM、東京
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熊本駅東口駅前広場上屋ほか
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熊本駅東口駅前広場上屋。 ▶
熊本駅東口駅前広場上屋 暫定型
所在地 熊本県熊本市春日3-637-2地先/
主要用途 公共用歩廊上屋/
竣工 2010年(完成予定2018年)/
発注者 熊本県/
設計 建築:西沢立衛建築設計事務所、
構造:Structured Environment/
施工 鉄建建設/
敷地面積 6,037.72m2/
建築面積 907.31m2/
延床面積 1,054.34m2/
階数 地上1階/
構造 鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造/
工期 2009年7月〜2010年3月
中村キース・へリング美術館
所在地 山梨県北杜市小淵沢町10249-1,7/
主要用途 美術館/
竣工 2010年(完成予定2018年)/
発注者 中村和男/
設計 建築:北川原温建築都市研究所、
構造:Structured Environment、
設備:建築設備設計研究所/
施工 大成建設/
敷地面積 18,438.00m2/
建築面積 881.44m2/
延床面積 842.03m2/
階数 地下1階、地上1階/
構造 鉄筋コンクリート造+鉄骨造(混構造)/
工期 2006年6月〜2007年4月
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選考評
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「柔軟な思考の裏付け」
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アラン・バーデンさんの仕事に注目して来た・・・。その意味では今回の「日本構造デザイン賞」に決まったのも至極当然のような気がする。
今回の日本構造デザイン賞の候補作品のひとつとなっていた「熊本駅東口駅前広場上屋(建築:西沢立衛)」の仕事においてもかなりの柔軟な思考回路と忍耐の持ち主なのだろうと思う。この仕事、キャノピーはキャノピーなのだからもっとも単純極まりない要件の解を求めたに過ぎないのだが、それでもフラットなコンクリートの無梁版、約1,000平米の広さを14本の柱で支持するとなると、それを400mmの厚みに納めるにはそれ相当の知恵がいると云うことである。我々建築家は気楽に「もう少し薄くならないか?」「柱の径はもう少し細く・・・」などと云うに違いないのだが、結局柱とスラブの接合部はピン接合としているので、柱は基礎から立ち上げたキャンティレバーの上にガチガチのコンクリート版(スラブには176本ものPCケーブルが交差して配置され、また均等にプレストレスを与えるなど様々な工夫がなされている)をそっと載せてあると云う代物。そもそもこの構造体を建築として扱うか、土木構造物として扱うか?建築センターとの経緯や道路付属物をして扱うこととなった後の構造評価委員会による意見の落差を知るにつけ、この単純な架構の実現への大変な苦心が分かるのである。
私がアランさんの構造に注目したのは2006年3月に発表された「真下慶治記念美術館(建築:高宮真介)」の端正な構造形式を紙上で見てからである。建築家の腕もあろうが、積雪荷重に耐えるためのトラスを構成した木造の架構、とくに下弦材にラジアータパインの合板を用いてそのまま天井の仕上げとしているなどの構造と意匠の合体は、素直に美しく整っていて小品ながら感銘を受けたのだ。実は、このことをきっかけに・・・私も近々発表することになる岐阜の仕事でお手合わせをしていただいたので、アランさんの仕事ぶりを直接経験することができた。アランさんのもつ柔和な表情や言葉遣いそのものであったことをご報告しておく。
さらに、この建築の構造がアランさんだったのか・・・と改めて見直した作品が、近頃芸術院賞や村野藤吾賞、建築家協会の建築大賞など総なめにした「キース・ヘリング美術館(建築:北川原温)」である。
このことに気づいてなお、やはり・・・の感がある。
アランさんの仕事は建築の構造と云うエンジニアリングがアートに足を踏み入れたことを感じざるを得ない。
横河 健(選考委員・建築家・日本大学理工学部教授)