2007年第2回
日本構造デザイン賞

総合選考評 ▶



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斎藤 利昭(さいとう・としあき)
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経歴(受賞時)
1963年 北海道生まれ
1988年 横浜国立大学大学院工学研究科計画建設学専攻博士課程前期修了後、清水建設株式会社入社、現在に至る

主な作品
1997年 アミティエ新大阪 第10回JSCA賞新人賞受賞
2003年 清水建設技術研究所新本館 第6回日本免震構造協会賞作品賞受賞
2003年 読売新聞社東京北工場
2004年 カルピス(株)新本社ビル
2004年 豊洲ISTビル
2006年 佐鳥ビル

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東京建設コンサルタント新本社ビルの構造設計
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外観夜景。

東京建設コンサルタント新本社ビル
所在地 東京都豊島区/ 主要用途 事務所/ 竣工 2006年/ 設計 清水建設/ 施工 清水建設/ 敷地面積 1,322.14m2/ 建築面積 868.43m2/ 延床面積 5,980.28m2/ 階数 地下1階、地上7階、塔屋1階/ 構造 鉄筋コンクリート造/ 工期 2005年8月〜2006年8月/

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選考評
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山手線の線路わきに建つ建築面積約870m2;延床面積約6,000m2の中規模オフィスビルで、1階2階の間に免震層を挿入し、土木的スケールの構造計画を導入している。
2階床部分に免震層を入れることで1階に大スパンの開放的空間を創出するとともに、2階以上のオフィス空間を山手線の車輪走行レベルより上にあげ、オフィス空間環境の向上が図られている。
このプロジェクトの施主がインフラストラクチャーの設計にたずさわるエンジニアリングコンサルタント企業であることから、おもいきった土木的デザインを建築に応用し、かつ、耐震性の高い構造計画を総合的に適応している。ふたつのコンクリートコアにおかれた免震装置から外周部にはねだしたプレストレスコンクリートの大梁は、構造体を露出することで大胆に表現され、正面ファサードをあざやかに演出している。2階以上のファサードには応用に合わせたPCa版が計画され、構造がデザイン要素として表出している。外装PCa版は柱および耐震壁として利用され、耐震壁の配置は鉛直および地震力の応用分布にもとづいて決定され、これをファサードデザインのパターンとしている。オフィス階は最大14mのフリースパンのフレキシビリティの梁が露出するダイナミックで素直な内部空間デザインに成功している。梁下は2,800mmだが、露出梁としているために3,400mmの天井高さがのびやかな空間をつくりあげている。この免震装置は鉛プラグ入り積層ゴムが12台配置されており、免震のメカニズムが明確にみえることが、この建築に特異なデザイン的質をもたらし、中規模の建築が巨大な土木スケールを彷彿とさせる緊張感を都市の一画に創り出している。
建築全体のデザインを構造表現を中枢においた技術的素直さでまとめあげた点、構造デザイン賞にふさわしい作品として評価した。構造設計者の集積された技術の質と構造デザインへの構造技術の貢献が充分に感じられた。

岡部 憲明(選考委員・建築家・神戸芸術工科大学教授)

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