──
竹内 徹(たけうち・とおる)
──
経歴(受賞時)
1960年 大阪府生まれ
1984年 東京工業大学大学院修士課程修了
1984-2002年 新日本製鉄株式会社
2003年- 東京工業大学大学院助教授
主な作品
1988年 第2新日鉄ビル
1989年 ザ・フォーラムカントリー・クラブハウス
1993年 旧日本長期信用銀行本店ビルガラスキューブ
1998年 香港中環中心(The Center)
2003年 筑穂町図書館
──
東京工業大学緑が丘1号館レトロフィット
──
補強前。 ▶
東京工業大学緑が丘1号館レトロフィット
所在地 東京都目黒区/
主要用途 大学施設/
竣工 2006年/
発注者 国立大学法人東京工業大学/
設計 東京工業大学安田幸一研究室、
東京工業大学竹内徹研究室、
東京工業大学施設運営部/
施工 清水建設/
敷地面積 28,116m2/
建築面積 1,321m2/
延床面積 6,607m2/
階数 地下1階、地上5階、塔屋2階/
構造 鉄筋コンクリート造/
工期 2005年7月〜2006年3月
──
選考評
──
従来の東京工業大学緑ヶ丘1号館はキャンバスの森を経て小高い丘のすばらしい立地に建てられているが、この環境にふさわしいとは言いがたい建物であった。
このプロジェクトは、昭和42年に建てられた大学校舎の耐震性の向上と研究室の居住性能を向上させるという課題と
改修後この立地にふさわしい建築を創ることを目的とした大規模な改修である。
耐震性向上については、既存性の炭素巻きによるせん断補強と建物外部に設置したエネルギー吸収ブレースによる既存躯体の負担低減によって大きな外乱に対する損傷防止を実現し、
長寿命化を図っている。
このエネルギー吸収型耐震補強の実施にあたっては、解析理論の構築、振動解析、検証実験がなされた。また、施工は研究室での活動を妨げることのないようすべて外部から行われた。
エネルギー吸収ブレースはその美的なパターン、部材のプロポーションとディテールが構造デザインされ、リニューアル後の建築デザインの重要な要素となっている。
このプロジェクトの特筆すべきことは、エネルギー吸収ブレースと既存の庇を活用して遮蔽ルーバーとガラスを組み合わせた半開放型ダブルスキンを構成し、
居室の空調熱負荷と冬季の暖房熱負荷低減によって省エネルギー化を実現していることである。
外壁を形成する再生木ルーバーとガラスのファサードの校舎は、建築家と構造家の協働によって、大学のキャンパスにふさわしい建築に生まれ変わった。
昨今、既存建築物に関する耐震を主とする性能の向上、地球環境を考慮した既存ストックの有効活用の必要性が叫ばれている。
こうした社会背景にあって、構造家がリニューアル分野の発展に寄与することは、建築文化にとって大変意義深いことである。
播 繁(選考委員・構造家)