2019年第14回
日本構造デザイン賞
松井源吾特別賞

総合選考評

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君島 昭男
(きみしま・てるお)

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君島 昭男

経歴(受賞時)
1937年 東京都大森区(現大田区)生まれ
1956年 福島県立平工業高校機械科卒業後、日本鋳造株式会社入社、製造部配属
1966年~ 橋梁用支承、建築金物、景観商品の設計に従事
2016年 日本鋳造株式会社退社

主な担当作品
大阪万博 EXPOタワー(1970年)
水戸芸術館展望塔(1990年)
サンドーム福井(1995年)
熊谷ドーム(2003年)
東京スカイツリー(2012年)
他多数

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業績:鋳鋼による建築および構造デザインへの貢献
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大阪万博 EXPOタワー(1970年)

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選考評
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 優れた建築家の理念を実際の構造物として具現化するのが構造家だとすると、そのディティールを具現化し、つくり上げるのは施工者でありメーカーのエンジニアである。「神はディティールに宿る」の言葉通り、著名な構造家の作品にはそれを陰で支える優れたメーカーエンジニアがいることが多い。君島昭男氏は日本鋳造株式会社に在籍しながら坪井善勝氏や松井源吾氏、川口衞氏や青木繁氏、木村俊彦氏や渡辺邦夫氏など、わが国の代表的な構造家の影で主に鋳造による鋼構造接合部の造形を支えてきた。その作品には「神慈秀明会礼拝堂」、「大阪万博EXPOポタワー」、「サンドーム福井」、「大石寺正本堂」、「水戸芸術館展望塔」、「横浜大さん橋」、「東京スカイツリー」などの名作が肩を並べる。
 鋳鋼は溶接が可能で構造材に使える一方、鋳鉄と異なり粘り気が強く冷え固まる過程で割れやすいため、特に大きく複雑な形状の部材を安定した材質で鋳込むには高度な知識と経験が必要となる。構造部材として成立している形状でも、実際に製作できるかどうかはわからない。詳細設計の段階で部材を製作するエンジニアと相談しながら実現可能な姿に落とし込んでいかねばならない。君島氏は構造家の意図を汲み取りながら鋳造冶金の技術を駆使し、職人気質でひとつひとつの作品に根気よく付き合い優れた作品を生み出してきた。その業績はわが国の構造デザインに寄与するところが大きく、ここに松井源吾特別賞を授与するものである。構造家倶楽部にてメーカーエンジニアを表彰するのは始めてのことであるが、研究者と同様、今後構造デザインの発展に功績のあった方々を広く顕彰していく所存である。

竹内 徹(選考委員・構造家)

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