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日本構造デザイン賞賞牌

2019年 第14回日本構造デザイン賞


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総合選考評
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 15年間、15回に渡って続けられた「松井源吾賞」を引き継いだ「日本構造デザイン賞」が、回を重ねて今年で14回目を迎える。この賞が生まれるきっかけは、14年前に、その年限りで松井源吾賞の廃止が告げられたことにあった。この時、松井源吾賞受賞者の間で、構造設計者を顕彰する数少ない賞のひとつが消滅することは忍びないとの機運が高まり、善後策が協議された。その結果、日本構造家倶楽部が設立され、「松井源吾賞」が「日本構造デザイン賞」と名称を変えて継続されることとなった。倶楽部の設立当初は、松井源吾賞受賞者である正会員と、会に賛同して頂ける会友(個人)から寄せられた会費を運営資金としてスタートした。後には毎年の受賞者にも正会員になっていただき、関係者一同の並々ならぬご尽力によって15年目を迎えることができた。
 その矢先の5月29日、当倶楽部設立に大きく貢献し、最近まで中心メンバーとして活躍されていた川口衞先生が他界された。そのわずか5日前には、第14回日本構造デザイン賞の選考会が行われている。私たちが受賞者選考をしているさなかに、川口先生は病と闘い、その力を失いつつあったのかと想うと悲しみに耐えない。ここにこれまでのご貢献に深く感謝の意を表し、ご冥福をお祈りしたい。
 今年の日本構造デザイン賞応募者数は9名であった。これは過去3年間の応募数が10名、10名と続き、昨年が14名であったことから見ると、若干少ない応募数であった。9名の応募者数を年齢別に見ると30才代1名、40才代6名、50才代2名となり、中堅からベテランの域に達しようとしている方の応募が多かった。この賞が直接の応募作品だけでなく、これまでの実績も選考基準としていることによっているものと思える。応募作品の構造種別を見ると、木造と他の構造との混構造が6件、鉄骨造が3件と木質系建築の隆盛ぶりが顕著であった。この傾向は先日発表されたJSCA賞でも同様であった。地球環境を始めとしたさまざまな社会状況も追い風となって、今後も木質系構造の増加は止まらないものと考えられる。
 選考は2019年5月24日の16:00~20:00に、高橋晶子、竹内徹、桝田洋子、多田脩二の各委員と委員長である金田勝徳を含めた選考委員全員の出席のもとで行われた。委員会では、まず応募資料の精読を行った後、各委員が所見を述べ協議を重ねた。しかしその段階で受賞者を特定することはできなかったため、各委員が応募者2~3名を推薦する投票を行った。投票結果は、原田公明氏が4票、河合正理氏と与那嶺仁志氏がそれぞれ3票を集めて、獲得投票数上位3名となった。
 その中で、原田氏は応募者中最年長であることにふさわしい実績を有し、氏の代表作として挙げられた3作品のいずれもが技術的な独自性と、作品に対する高い貢献度が評価され、受賞者に選出された。もうひとりの受賞者については、河合氏と与那嶺氏どちらかの二者択一という辛い審査となった。
 与那嶺氏は応募作品にみられるように、設計・監理を通して周到な検討と、真摯な取り組みの姿勢が作品によく反映されていることに加えて、これまでの実績についても十分受賞に価すると評価された。一方、河合氏は東京都庭園美術館内に建つ約210㎡平屋建ての小規模なレストランを応募作品としている。周囲の恵まれれた環境に呼応した、16mスパンの吊屋根構造と鋼板耐震壁の組み合わせによる透明性の高い構造システムは美しく、選考委員の好感を集めた。しかし屋根構造の独自性と、これまでの実績の点でもう一歩及ばず、今後の活躍が期待されながら今回は惜しくも選外となった。
松井源吾賞特別賞は、長年日本の数々の名建築を鋳鋼品の開発・制作の面から支えてこられた君島昭男氏が、事前に当倶楽部理事会より推薦されていた。選考委員会では異議なく全員一致で君島氏を受賞者として選出することになった。

金田 勝徳(選考委員長・構造家)

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2019年 第14回日本構造デザイン賞
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原田 公明(はらだ・ひろあき)/さまざまな素材を活かした構造デザイン  経歴と受賞作品・選考評 
与那嶺 仁志(よなみね・ひとし)/道の駅ましこ  経歴と受賞作品・選考評 

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2019年 第14回日本構造デザイン賞 松井源吾特別賞
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君島 昭男(きみしま・てるお)
鋳鋼による建築および構造デザインへの貢献
 経歴と業績・選考評 

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選考委員
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金田 勝徳(委員長・構造家)
高橋 晶子(建築家)竹内 徹(構造家)桝田 洋子(構造家)多田 脩二(構造家)