2017年第12回
日本構造デザイン賞

総合選考評

前の受賞者
次の受賞者

──
伊藤 潤一郎
(いとう・じゅんいちろう)

──

岡村 仁

経歴(受賞時)
1977年 岐阜県生まれ
2003年 東京電機大学大学院卒業
2003年 構造設計集団<SDG>入社
2005年 Arup Japan入社
2012年 Arup Hong Kong
2013年〜 Arup Japan
2017年〜 東京電機大学非常勤講師

主な作品
白河市図書館(2012)
パワートレイン共同開発棟(2013)
表参道keyakiビル(2013)
クズミ電子工業藤沢新工房(2016)
太田市美術館・図書館(2016)

──
太田市美術館・図書館
──

2017_1_01 2017_1_02 2017_1_03 2017_1_04 2017_1_05 2017_1_06

外観。撮影 Daici Ano

太田市美術館・図書館
所在地 群馬県太田市/主要用途 美術館・図書館/発注者 太田市/設計 平田晃久建築設計事務所/施工 石川建設株式会社/敷地面積4,641㎡/建築面積1,496㎡/延床面積3,153㎡/階数 地上3階 地下1階/構造 RC造、一部鉄骨造/施工期間 2015年7月〜2016年12月/撮影 Daici Ano

──
選考評
──

 「太田市美術館・図書館」は、今年の日本建築界の動向の中でも大きな話題になる建築のひとつである。私自身見学をして、可能性を感じた建築であった。構造デザイン賞という視点で、受賞作品相当と評価された点をあげてみたい。
 ひとつはまず、建築家と構造家のコラボレーションという意味で、意匠設計と構造設計がより有機的かつ一体的に連携し、調和していると感じたことだ。基本計画の段階から、ディテール検討、施工に至るまで、両者の頻繁な議論、一体的設計が一貫して続き、高いレベルの建築を生み出した。構造計画的には新しさがあるというよりは、むしろ順当なソリューションといえると思うが、その順当さ、シンプルさが、意匠と構造の緊密なやり取りを可能にする土台として機能した、ともいえる。
 評価した第2点は、3D時代を感じさせる建築、3D空間でのみ考えることができる形状・構成・ディテールという面だ。立体的に絡み合った複雑な空間構成、おびただしい量のディテール数とその検討は、20世紀の建築にはなかったもので、やはりコンピュータの卓越した計算能力と、それを日常の道具として扱う感受性と実戦性があって初めて可能になった建築だ。ディテールの複雑さ、種類の多さ、息詰まるような緻密さは、多少疑問に感じるところもなくもなかったが、それを差し引いても、通常の設計料でそこまでやるのかというくらいの多大な努力と情熱が、意匠・構造の両方にまたがって展開し、また成功している。

西沢 立衛(建築家)

                          ◀前の受賞者    2017年第12回日本構造デザイン賞総合選考評    次の受賞者▶