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日本構造デザイン賞賞牌

2012年 第7回日本構造デザイン賞


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総合選考評
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 受賞作品の構造の素材として今年度は木と鉄が選ばれた。国産の木は輸入材に押され、開発が進まず、手つかずの資源である。これを有効活用すべきと今、国が振興策を講じている。木はタイムリーな素材である。一方、鉄の面としての建築表現はいまだ未開の分野である。鉄は古くて新しい素材である。鉄の面としての建築表現は今後も新たな挑戦が期待されるトレンディーな素材である。
 山田憲明氏は本会会員が主宰する増田建築構造事務所で数々の木造建築を担当した木造のエキスパートである。独立後間もないため、自己の作品が少ないが、同じく増田事務所時代の国際教養大学図書館棟も評価が高く、木造に真摯に取り組む長年の姿勢が評価され受賞となった。向野聡彦氏は現日建設計構造設計部長の職にある構造家であり、応募作品は鉄の面としての建築表現にすぐれた構造デザインで応じたホキ美術館である。建築は敷地の持つエネルギーをどのように表現するかによって全く違ったものになる。南に公園、北に住宅地を控え、東西に細長い湾曲した敷地に、高さを抑え、基壇のRC造の上に60cm浮かせ、二点で支持された鉄のチューブは、一端の片持ちが30mを超える、全長100mの空中展示棟である。しかしこのダイナミズムは実際に建物と対峙した印象では、むしろ抑えられ過剰な表現とは感じられなかった。
 今年度の選考委員は、建築家の手塚貴晴、乾久美子の両氏、日本構造家倶楽部から陶器浩一、小西泰孝に私を加え総勢5名で、6月12日(火)に全員出席の下で選考が行なわれた。日本構造デザイン賞の応募は、5名7作品で規模(延床面積)は100〜4,000m2と小・中規模の作品が多かったが、住宅、公共建築、改修など幅広い分野における構造デザインが集まった。応募件数が少なかったため、選考委員推薦を含めて応募作品のみに限らずに幅広く選考を行なうこととしたが、応募の中から選出した前述の2件はいずれも授賞に十分に値する構造デザインであると判断し、最終選出するに至った選考に当たっては、デザインコンセプトに対する構造デザインの試みに新規性があり優れ、両者の整合性・バランスがとれているか、という観点から受賞者を選出している。選考から外れた中にも優秀な作品はあったが、構造表現が過剰な作品や技術的に物足りなさが感じられる作品は選出を見送る結果となった。今年度は、ゼネコン設計部、組織事務所、アトリエの幅広い所属先から応募があったが、全体としては押されぎみなアトリエ派の活躍を期待したい。
 なお、日本構造デザイン賞松井源吾特別賞は、日本構造家倶楽部から推薦された小堀徹氏に全会一致で決定した。選考評は別欄にて記述する。

梅沢 良三(選考委員長・構造家)

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2012年 第7回日本構造デザイン賞
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向野 聡彦(こうの・としひこ)/ホキ美術館  経歴と受賞作品・選考評 
山田 憲明(やまだ・のりあき)/東北大学大学院環境科学研究科エコラボ  経歴と受賞作品・選考評 

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2012年 第7回日本構造デザイン賞 松井源吾特別賞
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小堀 徹(こぼり・とおる) /さいたまスーパーアリーナやモード学園スパイラルタワーズ等の一連の大規模建築の構造デザイン   経歴と業績・選考評  

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選考委員
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手塚 貴晴(建築家)乾 久美子(建築家)梅沢 良三(選考委員長・構造家)陶器 浩一(構造家)小西 泰孝(構造家)