2009年第4回
日本構造デザイン賞

総合選考評 ▶

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篠崎 洋三(しのざき・ようぞう)
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経歴(受賞時)
1959年 福岡県生まれ
1985年 東京工業大学建築学科終了
1985年- 大成建設

主な作品
1996年 湯河原研修センター
2002年 バンダイ新本社ビル
2005年 慶応義塾大学(三田)南館
2005年 日本平デジタルタワー
2006年 横河電機(株)金沢事業所
2006年 味の素㈱食品研究開発新棟
2008年 アステラス製薬つくば研究所

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代々木ゼミナール本部校 代ゼミタワー
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南側立面。   ▶

代々木ゼミナール本部校 代ゼミタワー
所在地 東京都渋谷区代々木2丁目/ 主要用途 専修学校・共同住宅/ 竣工 2007年/ 発注者 学校法人 高宮学園/ 設計 大成建設株式会社一級建築士事務所/ 施工 大成建設株式会社東京支店/ 敷地面積 3,509m2/ 建築面積 1,213m2/ 延床面積 27,446m2/ 階数 地下3階、地上26階、塔屋1階/ 構造 SRC造、免震構造/ 工期 2005年10月〜2008年03月/ 撮影 篠崎洋三 他

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選考評
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昨年、日本建築学会の会長であった斎藤公男氏が、「アーキニアリング」という造語を用いて、建築のデザインと構造とを統合すべく展覧会を開催し、現在でも日本中を巡回中である。この趣旨は十分理解できるが、もともと20世紀の建築のデザインは構造が主導してきたと私には思える。一般的なオフィスビルは均等ラーメンそのものであり、超高層は柔構造そのものであり、ドーム建築また然りである。
今回の審査に当たって、建築のデザインと構造との関係について、また改めて考えさせられた。応募作品に限らず、建築メデイアなどを通して紹介される多くの建築は、構造のシステム自体がデザインとして先行したものと、逆に建築のデザインが構造をねじ伏せたもの、その両極端が多く見受けられる。しかし、その間にあって微妙なバランスをとりながら、建築として美しく設計者の意図を表明しているものがあり、代ゼミタワーはその代表例といえる。
ガラスの箱をRCの薄い枠で囲ったたたずまいは、まず端正である。西新宿の超高層群からちょっと距離を置いたロケーションともあいまって、その印象はさらに強くなっている。
基礎に免震構造を採用しながら、それぞれ必要に応じて多様な耐震システムが用いられており、審査中、ここまでやるかとの声もあったが、大震災のたびに厳しくなる耐震基準のことを考えると、安全性の限界を確定できない現状では、決して間違いではないであろう。
むしろ、代ゼミタワーが、建物全体がひとつの構造システムで統一されているのではなく、いくつかの構造システムが適材適所に配され、それらが統合されて、新たな都市景観を作るという設計のコンセプトを実現して点を評価したい。
構造システムは、これまで一般解として成立することが大切であると思われてきたのは、汎用性が問われたからであろう。しかし、建築が個性的であろうとしたら、どこまで一般性から距離をおくことができるかが問われる。言い換えれば、均質化できない内部機能に対応した空間をそれぞれ確保しながら、ひとつの建築として統合し、これだけ猥雑ともいえる都市景観の中にあって、爽やかな個性を獲得していると思う。

中谷 正人(選考委員・建築ジャーナリスト)

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