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日本構造デザイン賞賞牌

2009年 第4回日本構造デザイン賞


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総合選考評
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 「松井源吾賞」を継承し、2006年に開始した「日本構造デザイン賞」も本年で4回目を迎える。本年も昨年に引き続き、建築家の横河健氏、ジャーナリストの中谷正人氏と日本構造家倶楽部から我々2名が審査にあたった。
 本年は、自薦9件、他薦1件の計10作品の応募があった。10作品の中で6件が木材を主要構造材とした作品、他の4件が鉄骨、鉄筋コンクリートを主としたものであり、まさに“環境の時代”を感じさせられる。そのいずれもが、それぞれの素材の特性を活かし、優れた構造デザインを具現化したものであったが、慎重な審議を重ねた結果、以下の2作品を「日本構造デザイン賞 作品賞」に選定することとした。
「芦北町地域資源活用総合交流促進施設」は、厚さ120mmの地産の集成材を編んで構成したスパン36m×45mの屋根とそのスラブに合理的に抵抗できるRC曲面壁により、アーキテクトが意図するかたちの軽快さと素材表現による強い空間性を追求した作品である。
 「代々木ゼミナール本部校 代ゼミタワー」は、超高層建築としての極めて端正な外観デザインとフレキシブルな内部空間を、免震構造、RC造スーパーウォール、メガトラスなどの先端構造技術を巧みに統合し実現した作品である。
 建築デザインの表現、構造デザインの試みをその効果、そのいずれもが優れており、かつ、いずれか一方が主張しすぎることなく、建物の利用者に快適な空間を提供していることが、選考の最後の決め手となった。選考された上記2作品の他に、「浪商学園熊取キャンパスA号館OUHS中央棟」、「2009高雄ワールドゲームズメインスタジアム」が最終選考に残り、いずれも受賞作品に匹敵する優秀な作品であったが、この決め手に対して一歩及ばなかった感がある。
 昨年より設けられた「日本構造デザイン賞 松井源吾特別賞」には、日本各地で産出される木材を「七沢希望の丘初等学校」や「朽木東小学校・朽木中学校屋内運動場」など、各地域の公共施設のストラクチャーに活用し、その構造設計および実大実験による検証などを幅広く手掛けてきた実績が顕著であると、審査員全員の推挙により山辺豊彦氏の受賞が決定した。一連の業績を含めた書籍の出版や、大工塾などにおける木造技術の次世代への伝承など、その活動は社会的、文化的功労の観点から非常に貴重なものである。
 「日本構造デザイン賞」は、中堅、若手を問わず、構造設計者すべてに幅広く門戸が開かれたものであり、もっとたくさんの応募があってよいと思う。この賞へのチャレンジを機に、「エンジニアリング・アーキテクト」として、日本国内のみならず世界で活躍できる構造家を発掘・育成したい、それが、日本構造家倶楽部としての本賞への大いなる期待でもある。そして、構造家としての十分な資質をもっている方には「松井源吾特別賞」に応募し、構造家倶楽部の会員となって、次世代の指導にあたっていただきたいと思う。

播 繁(選考委員長・構造家) 中井 政義(選考委員・構造家)

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2009年 第4回日本構造デザイン賞
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佐藤 淳(さとう・じゅん) /芦北町地域資源活用総合交流促進施設  経歴と受賞作品・選考評 
篠崎 洋三(しのざき・ようぞう)/代々木ゼミナール本部校 代ゼミタワー  経歴と受賞作品・選考評 

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2009年 第4回日本構造デザイン賞 松井源吾特別賞
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山辺 豊彦 (やまべ・とよひこ) /地域材活用による一連の構造設計と実権活動   経歴と業績・選考評  

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選考委員
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横河 健(建築家)中谷 正人(建築ジャーナリスト)播 繁(選考委員長・構造家)中井 政義(構造家)