2008年第3回
日本構造デザイン賞
松井源吾特別賞

総合選考評 ▶



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細澤 治 (ほそざわ・おさむ)
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経歴(受賞時)
1951年 横浜市生まれ
1976年 横浜国立大学大学院 修士課程修了
1976年 大成建設(株)入社
2003年 大成建設(株)設計本部構造設計プリンシパル
2007年 大成建設(株)設計本部 副本部長、現在に至る

主な作品
1997年 神戸ファッションプラザ、宮城県総合体育館、こまつドーム、札幌コミュニティドーム
1999年 パレットタウン、MEGA WEB
2000年 さいたまスーパーアリーナ[第12回JSCA賞]
2001年 札幌ドーム[日本鋼構造協会業績賞]
2006年 しもきたドーム[日本鋼構造協会業績賞]

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業績:しもきた克雪ドームならびに一連のドーム建築物における構造設計
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しもきた克雪ドーム外観。

しもきた克雪ドーム
所在地 青森県むつ市真砂町93-6/ 主要用途 体育館、観覧場/ 竣工 2005年/ 発注者 青森県/ 設計 原広司+アトリエ・ファイ建築研究所、 大成建設一級建築士事務所 施工 大成建設/ 敷地面積 50,000m2/ 建築面積 21,667.48m2/ 延床面積 19,154.05m2/ 階数 地上1階、塔屋2階/ 構造 鉄骨造、鉄筋コンクリート造/ 工期 2003年8月〜2005年7月

宮城県総合体育館
所在地 宮城県利府町/ 主要用途 体育館/ 竣工 1997年/ 発注者 宮城県/ 設計 大成建設一級建築士事務所/ 監理 飛鳥建築設計事務所/ 施工 間組・三井建設・佐々良建設JV/ 敷地面積 1,461,000m2(公園全体面積)/ 建築面積 13,718m2/ 延床面積 19,900m2/ 階数 地上3階/ 構造 鉄筋コンクリート造、鉄骨造/ 工期 1994年10月〜1997年3月

こまつドーム
所在地 石川県小松市/ 主要用途多目的スポーツ施設、生涯学習施設/ 竣工 1997年/ 発注者 石川県小松市/ 設計 山下設計・大成建設設計共同体/ 施工 大成建設/ 敷地面積 71,100m2/ 建築面積 23,394m2/ 延床面積 22,343m2/ 階数 地上4階/ 構造 鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造/ 工期 1995年3月〜1997年4月

札幌コミュニティドーム
所在地 北海道札幌市/ 主要用途 多目的スポーツ施設/ 竣工 1997年/ 発注者 札幌市/ 設計 三菱地所・アトリエブンク・大成建設・岩田建設共同企業体/ 施工 大成建設・岩田建設共同企業体/ 敷地面積 135,889m2/ 建築面積 17,865m2/ 延床面積 18,852m2/ 階数 地上2階/ 構造 鉄骨鉄筋コンクリート造/ 工期 1995年8月〜1997年3月

さいたまスーパーアリーナ
所在地 埼玉県さいたま市/ 主要用途 体育館(観覧場)、店舗/ 竣工 2000年/ 発注者 埼玉県/ 設計 MAS・2000共同設計室 (代表/日建設計、協力/Ellerbe Becket・Danmeis・Flack+Kurtz Consulting Engineers)/ 技術協力 大成建設・三菱重工業JV/ 監理 埼玉県・日建設計JV/ 施工 大成建設・三菱重工業・UDK共同企業体/ 敷地面積 45,007m2/ 建築面積 43,730m2/ 延床面積 132,398m2/ 階数 地下2階、地上7階、塔屋2階/ 構造 鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造/ 工期 1997年1月〜2000年3月

札幌ドーム
所在地 北海道札幌市豊平区/ 主要用途 サッカー場、野球場、多目的観覧場/ 竣工 2001年/ 発注者 札幌市/ 設計 原広司+アトリエ・ファイ建築研究所、アトリエブンク/ 施工 大成建設、竹中工務店、シャール・ボヴィス/ 敷地面積 306,458m2/ 建築面積 55,157m2/ 延床面積 98,281m2/ 階数 地下2階、地上4階、搭屋2階/ 構造 鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造/ 工期 1998年6月〜2001年5月

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選考評
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細澤治氏はこれまでに「しもきた克雪ドーム」の他に宮城県総合体育館、こまつドーム、札幌コミュニティドーム、さいたまスーパーアリーナ、札幌ドームなど、多くのドーム建築物の構造設計ならびに技術検討を担当してきた。アーキテクトが考える建築デザインに対し、構造合理性を持った架構デザインを完成させている。また、それらドームには多雪対応、開閉屋根、大規模可変システムなどの新規技術が多数導入されている。そのため新規技術についても多くの実験・調査およびモックアップ等による入念な検討を実施してこられている。ドームのような大架構建築には、さまざまな可能性を建築家に提案しながら、全体の構造合理性を担保する役割が構造設計者に求められる。日本の代表的なドーム構造設計者としてその実績は一流である。
「しもきた克雪ドーム」では札幌ドーム等の経験を活かしながら、正方形プランの中にうまくドーム球面を融合させている。このドームの特長である外周デッキは、冬季には屋根雪を堆雪するデッキ、夏季には展望デッキという機能性をもたせている。屋根材に滑雪性に優れた膜材の使用、滑雪のために必要な屋根勾配の確保および屋根頂部に雪割機能を有した電熱ヒータ―の設置、屋根雪を堆雪するコンクリートデッキ、コンクリートデッキを利用した雁木空間等、あらゆる雪対策を施しており、多雪地域に建つ大規模構造建築物のひとつのあり方を示している。
ドーム建築は大架構としての難しさと同時に、さまざまな環境工学的な対応にも十分に配慮しなければならないという点で、建築設計技術の総合力が測られる。近年、経済的な環境からドーム建築がつくられる機会が大幅に減少しているが、スポーツ施設としての昨日だけでなく、地震、多雨、多雪、台風等大規模な災害からのプロテクション・シェルターとしてのドームの要請は高く、今後も技術的な開発が継続的に行われなければならないと思われる。細澤氏のたゆまぬ努力によってこのような進化型ドームの構造的な提案は卓越しており、またこれまでのドーム構造設計の集大成として「しもきた克雪ドーム」を高く評価し、その優れた業績を認め、松井源吾特別賞として推薦するものである。

仙田 満(選考委員・建築家)

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