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山田 祥平
(やまだ・しょうへい)
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経歴(受賞時)
日建設計エンジニアリング部門構造設計グループアソシエイト
1982年 神奈川県生まれ
2005年 京都大学工学部建築学科卒業
2007年 京都大学大学院工学研究科建築学専攻修了後、日建設計入社
主な担当作品
赤坂センタービルディング(2013年)、北播磨総合医療センター(2013年)、修道大学3号館(2013)、大塚グループ大阪本社大阪ビル(2014年)、新国立競技場 – Zaha Hadid Architects案(2015年)、龍谷大学大宮キャンパス東黌(2018年)、W Osaka(Wホテル大阪、2020年)、光亜興産本社(2022年)
「東洋陶磁美術館エントランス棟」外観。左側がカフェ。(撮影:岡本 公二) ▶
東洋陶磁美術館エントランス棟
所在地:大阪府大阪市北区中之島1-1-26/主要用途:美術館エントランス、喫茶/竣工:2023年/発注者:地方独立行政法人大阪市博物館機構/設計:株式会社日建設計/施工:株式会社竹中工務店/敷地面積:4,999.26㎡/建築面積:316.20㎡(増築部)/延床面積:399.38㎡(増築部)/階数:地上2階(増築部)/構造:RC造・S造/工期:2022年1月~2023年8月
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選考評
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端正な構造設計をされる、というのが作品賞を受賞された山田祥平さんの構造設計作品群から受けた印象である。部材の構成や選定に無駄がなく、完成した建築物に心地よい緊張感が漲っている。今回の受賞作品も然りで、湾曲したRC壁と鉄骨屋根だけで構成された極めてシンプルなガラスの構造体が生み出された。山田さんの構造計画の根底には綿密な手書きの計画ノートがある。丁寧なスケッチと計算を交えて、建築家との共同作業を練り上げていくプロセスに共感した。この構成に至るまで計画案も2回変更されたというが、その度ごとに綿密なノートの紙面が積み重ねられていく。これは多くの若手構造設計者の参考になるであろう。実際に現地を訪れてみると、ガラスのエントランス棟は既存の美術館の前で、静かに佇んでいる印象を受けた。内部に入ると熱押形鋼のマリオンや曲線階段などの山田さんの細部に至るまで配慮された設計で溢れていた。山田さんは、まだ40歳代前半という若手構造家であるが、その手から繰広げられる構造設計は、もはやベテランの領域と錯覚してしまうほどである。今後の活躍がますます楽しみでならない。
早部 安弘(選考委員・構造家)
陶磁器をイメージして円錐から切り出した曲面壁とその上に載る板状の屋根。ボリューム感のある既存建物に対して透過性の高いデザインが目指されている。エントランスホールとして上階へ導く機能への特化によって純粋な構造形式が選択されている。床からの片持ち架構の曲面壁は、片持ちのアンバランスな薄い屋根の反力にも対応している。500mmという壁厚は、構造的に余裕をもたせることで屋根の変形のばらつきに対応することができている。調整機構など現場でのつくり方の痕跡が見えなかったのが少し残念ではあったが、構造設計者のスケッチ、略算検討の中に明快でありながら冗長性を目指す姿勢がみられた。こうした小規模な建築での構造計画の試行錯誤が、大規模で複合化される構造形式の建物の設計の中でも感覚として活かされていくことを期待したい。
腰原 幹雄(選考委員・構造家)
構造デザインには、構造が主役となり空間と一体的に表現されるものと、構造が巧妙に隠され、建築空間が主役となるものが存在する。山田祥平氏が設計した「東洋陶磁美術館エントランス棟」は後者に属し、ひときわ目を引く美しい夜景の写真が印象的な、完成度の高さを強く感じさせる作品である。湾曲した壁面にエレガントな階段と手摺りだけがあり、全面ガラスを支える柱にしては細すぎるマリオンは、浮遊感のある屋根を実現している。構造設計者であれば気づくであろう、ただならぬ設計内容は、この建築の魅力として存分に発揮されていると感じられる。
曲面RCの幾何学を逆円錐の一部に置き換え、施工性に配慮するバンラス感覚と、マリオンの張力導入によってキャンチレバー先端のサッシ挙動を制御する技術に裏打ちされた創造性をもち、また、張力導入するために複雑なキャンバー形状を計画し、各所で計測結果と解析値を比較しながら監理するという、その緻密で精緻な作業には狂気さえ感じさせるものがある。たいへん共感できる魅力的な構造家である。
山田祥平氏は、これまでにも建築デザインを活かす構造デザインを実践しており、今後の作品にも大いに期待が寄せられている。まさに、日本構造デザイン賞にふさわしい構造家である。
大野 博史(選考委員・構造家)